唖然としながら、

携帯ショップで会ったボーイが、ビールを置き、

席を離れても、しばらく目で姿を追ってしまったけど、

そんな時間は、一瞬しかない。

お客は、すぐに話しかけてくるし、

やることは多い。

突き出したグラスに、ビールを注ぎ、愛想笑いとともに、初めてつくお客だから、探りの会話を始める。

「よくこの店には、来られるんですか?」

注ぎ終わったビールを、一気に飲み干したお客は、少し目を丸くしながら、

可憐に顔を近づけた。

「お前」

可憐は、思わず顔を背けたくなるのを、必死に抑えながら、笑顔を作った。

「はい?」

蛙の潰れたような顔で…よく言えば貫禄のある…ただの豚は、

可憐を舐め回すみたいに見、

「俺のこと知らないんだあ〜へえ〜」

可憐は、すいませんと頭を下げた。

こういう客はいる。

自分のことが、店で有名で…特別なお客様だと、思ってるやつが。

(うざい)

と心で呟きながらも、可憐は、愛想笑いを浮かべながら、接客を続けた。