呆気なく、死んだ。

あまり、悲しくはなかった。

いきなりだったけど、

亡くなる予感はしてた。

あまり生きる気力が、昔からなかったから。


育てて貰った記憶がない。

食事も、掃除も、洗濯も、

全部、自分でしてたから。


母親は、何もしなかった。

いつも、お酒を飲んで…

時折泣いていた。


ある名刺を見つめながら…。


うちは、所謂

母子家庭だ。


親戚のおばさんは、かわいそうと言うけど、

今やうちのクラスの半分は、

そういう家庭だ。

世の中、変わった…のかな。

よくわからない。

国も、母子家庭があまりにも多くなったからか…

母子家庭の免除をなくしていく。

数年前までは、病院は、

ほとんどただだったのに…。

免除は、なくなった。

世の中、金かねだ。

母親が死んで、

あたしに残ったのは、

一枚の名刺。

その名刺を、初めて、

まじまじと見た。

主任 松崎達也。

店は、ヘイト。

夜の仕事。

クラブかラウンジか…

キャバクラ。

詳しくは、わからないけど、

父の仕事場だった。