「えっと、じゃあ…涼太くん」




 「なに?」





 彼は下の名前で呼ばれると、満足そうな笑みを浮かべて首をかしげた。


 みんな「瀬戸」と呼んでいるのに、どうしてあたしは下の名前で呼ばなくちゃいけないのだろう。





 「やっぱ…いいです忘れました」




 「そっか」





 出会ったばかりの瀬戸涼太。


 あたしが今日初めてこの校舎内で会話を交わした、瀬戸涼太。


 これから、あたしが涼太くんを好きになっていくことは、今は誰も、あたしすら知る由はなかった。