「…ていうか。強い…」
相手の男は数分も経っていない間に倒れこんでいた。
静くんの周りを、生徒が避けていく。
「…どっかのゲームみたい」
「何がだ?」
「あ。直樹」
「ほぉ…? 誰見てたんだよ?」
直樹の顔には黒い笑みが浮かんでいた。
その後ろには智さんがいて、苦笑していた。
「だ、誰も? でも…皆、喧嘩とかが当たり前なんだね」
「……喧嘩なんて、俺等にとっては気持ちを確かめる行動なんだよ」
小さく呟いて、直樹があたしを抱っこした。
というか、こ、これってお姫様抱っこだ…。
「おら、行くぞ。智」
「はいはい」
2人が向かったのは、壊れかけた屋根のある駐輪場。
そこに何台ものバイクが置かれていて、一際目立つものがあった。
「これって直樹のだよね?」

