着いた先は小さなアパート。
そこまでは古くなかった。
家の中に案内されると部屋は片付いていた。
シンプルな部屋の隅にパソコンが置いてある。
それと青いシーツのベッド。
カーテンも緑と青に近い綺麗な色だ。
「カップ麺多いんだね」
ゴミ箱をちらりと見て言うと、彼は少しだけ寂しそうに笑う。
「作ってくれる人、いなかったし」
あたしはベッドの前に腰を下ろすと、パーカーを脱いで長袖のシャツ一枚になった。
この部屋は暖房がついていてとても温かい。
「お前、親は大丈夫なワケ?」
「親って呼べるか分からないし大丈夫だよ」
そう言うと、少しだけ興味が湧いたのか頷いていた。
「あ、そだ。名前な。俺の名前は藤 直樹(フジ ナオキ)」
「藤?」
「そそ。呼び捨てでいーからな」

