「ねぇ…アンタ。杏だっけ。


男とばっかいてさ、おとこたらし、だね」




嫌味を言ってきたのが、同じクラスのちやほやされている女の子。



小呉と似たような人だ。




「おとこだぁ~いすきなんだよねぇ?」




笑っているように見えて、顔はこわばっている。


あたしはあの時、凄い泣き虫だったっけ。




蒼太がいつもそれを止めていた。

何度も怒ってくれた。



「アイツはそんなんじゃねぇっ」って。





でも男好きと言われたのは、今日が初めてじゃなかった。






「……うるさいな」





その声は、他の誰でもない静くんだった。


いつもの笑顔は消え失せていて睨みあげていた。




「あんたら、どっかいけよっ!!!!」



静くんが怒った姿は、蒼太も初めて見たという。