「…絶対に幸せにしてやるよ」
嘘のないような言葉で、あたしに微笑んだ。
「…ありがと…」
あたしはきっと彼を完璧に信じ込もうとしている。別に逃げているわけではないのだ。
まるで自己暗示をかけるように、その言葉を繰り返した。
彼の後ろを歩いて息を吐く。
夜は寒くて、触れている彼の指先も冷たかった。
「あ。ホッカイロあるよ」
「んあ。何だよ、それ」
彼の頬に当てる。
「あったけぇー…」
「家に着いたら、名前教えてくれる?」
「そうだったな。忘れてた」
あ…。
彼が無邪気に笑った。
それが瞼に焼き付いて、中々離れない。
「…ここだ」

