「杏ちゃんっ! よろしくっ!
敬語なんていらないからね」
あぁ。この感じ。
静くんの時もそうだった。
顔以外であたしを求めてくれた人たちの言葉だ。
「…うん」
握手をすると、学校内を案内してくれた。
直樹は会長らしく、忙しいと言い行ってしまった。
「会長様なんだね…」
「直樹すげぇよな。勉強もトップなんだぜ」
「トップ?!」
驚いて彼を見ると、誇らしげに直樹の立ち去った方向を見つめていた。
「この不良学校で1番荒れてるんだよな。
でも1番頭がいいからさ。
先生ドモも、何も言えねぇんだよ」
「そうなんだ…」
「杏ちゃんはさ、直樹が何で強いのか知らないだろ?」
「まぁ…」
「杏ちゃんが攫われたとき、本当に相手が可哀想だと思ったよ」
「え……? そんなに…?」
「直樹はこれまでに、1回も負けたことがないっていう伝説の人なんだ。
だから不良や、一般の人ですら知ってる人が多いよ」

