11歳を迎えた年の秋。いつも通り蒼太と一緒に帰ると、家の周りにはパトカーや救急車が止められていた。


そこにはお母さんが青ざめて立っていた。




「杏……何だよこれ…」



蒼太の震える声を最後に、あたしは目の前が真っ暗になっていった。



お父さんが運ばれていってそのままお母さんも行ってしまった。


蒼太が手を握ってくれたけど震えは止まらなかった。




昨日、お父さんの様子がおかしかったのだ。

いつもの争う声が聞こえなくて、静まり返っていた。


お母さんも俯いたままで、あたしには何も分からなかった。






「杏……、1人じゃないからな。俺がいるからな…」



「蒼太…これはどういう…ことなのか、あたしには分からないよ…」






昨日まで会えていたお父さん。



優しくて、でも言葉は厳しくて。誰よりもきっとあたしを愛してくれていた。


冷え切ったお母さんをずっと支えていてくれた。




「……ねぇ。蒼太…あたしはどうすればいいの…」