蒼太と夕暮れを楽しみ、家に帰った。
玄関に入ると食器の割れる音がする。
「お前はここに引っ越したのに、まだ片付けすらも終わらんのか!」
「貴方も手伝ってちょうだいよ!」
「くっそっ! お前なんかに杏なんて預けてらんねぇーよ! 今すぐにでも、杏を連れて帰りてぇよ!」
「貴方といるほうが危険でしょう?!」
夫婦喧嘩が毎日絶えない。
見えない言葉の暴力。
お父さんとお母さんの仲がいいなんてことは一度もない。
それなのに“離婚”はしなかった。
お父さんたちの親同士で結婚を決めて、お互い離婚が出来る状況ではなかった。
それにお父さんは体が弱くて、お母さんも見放せなかったのだ。
本当は優しい人達なのに。
階段を上がって、部屋に閉じこもった。
上の階にいても聞こえる罵声はいつになっても止まない。
そんな時、窓を叩く音がした。
カーテンを開けると蒼太がいて「開けろ」と口でぱくぱくしていた。

