「…王子さまじゃねぇ。残念だけどな」




彼の被っていたフードが風でめくれ、栗色に近い髪が見える。





「じゃあ何…??」



彼の声がもっと聞きたくなる、この感情はなんだろうか。





ゆっくりと艶のある唇が動いた。




「…暴走族だ」




「ぼうそう…族?」





「そうだ。お前も来いよ。俺に堕ちるのも時間の問題だからな」


「あたしは恋なんてしないもん…」




下唇をきゅっと噛み締めて、彼の瞳を見つめる。





「…安心しろ。俺が愛してやるから。どーせ行くとこねぇんだろ?



俺の家に来ればいいじゃねぇか。






俺も1人で寂しかったトコなんだよ…」





あぁ。




そんな瞳で見られると、何も言えなくなる。




彼の伸ばした手のひらにそっと自分の手を重ねた。