「杏……起きてたのかよ」
「あ。直樹、ちょっとさ。腕を退けてくれるとありがたいんだけど…」
「嫌だ」
直樹は少しだけ拗ねたように呟いて、あたしを抱き寄せる。
「このくらいなら痛くないだろ?」
「…直樹」
心配してくれているみたいで、直樹の触れる手が優しい。
何度も撫でられて、ぼんやりとしてしまう。
「傷……まだ痛むのか?」
「だいぶマシになったよ」
「…ふぅん。それで??」
「え?」
直樹の唇が耳元に触れる。ゾクッとして離れようとした。
だけどそれも敵わず、直樹の吐息がかかる。
「蒼太っつぅヤツと、昨日どこ行ってたんだよ…?」
「な、何でそれを…」
しどろもどろに言ってしまう。すると直樹の機嫌が悪くなった。
「謹慎処分くらってるやつが、学校帰りどこ行ってたのか気になってな。その様子だと…アイツと一緒だったのかよ…」

