直樹の不機嫌そうな声が聞こえた。


意識が段々ぼんやりとしてくる…。




「……謹慎処分くらってたなら、何で言ってくれねぇんだよ…」


「直樹…」


「お前は俺の彼女って自覚。あんの?」




「え。直樹、お前彼女持ってたのかよ」


誰の声なんだろう。

全く知らない人の声だ…。



「うっせ。智に言ってなかったな、とにかく出来た」


「うわぁ…長年の友達に酷い言い草だ」


「今言ったからいいだろ」




「え…、彼女なんすか?」


「巧、てめぇもかよ…。カップルで悪いかよ」


「そうじゃなくてずっと蒼太かと…」




中沢君の驚く声がする。そりゃ誰にも直樹と同居していることなんて言ってないから当たり前だ。




「…杏。もう寝ていいから。大丈夫、俺が守るから」





直樹の優しい声を最後に、ゆっくりと瞼を閉じる。


直樹の温もりがふわりと身体中に広がって、安心した。





その後の記憶は全くなかった。