不意に誰かがあたしの手を握って、耳元で「目ぇ開けろ」と甘く囁いた。

すぐ傍に直樹がいるのを確認すると、肩の力を抜く。
さっきの人達はもう地面に倒れこんでいた。




「……危ないことしやがって」




温かい何かに抱きしめられて、涙が零れ落ちた。




「怖かった…」



泣きそうな声で言うと、直樹の抱きしめる力が強くなった。



「…もう離さないから、大丈夫だ」


直樹が服を破いてあたしの腕に巻きつけた。



「頬もひっでーなぁ…、おい。巧ってヤツ。杏は学校でどんなん何だよ?」



巧…??



え、あたしの隣の席の…??





「すんげぇ、可哀想なくらい苛められてるヤツ。だけど蒼太がきっと守ってると思う。学校ではな」



「また、ソイツかよ…」




中沢君がどうしてここにいるのだろう。





「…杏。巧はな、お前のことを気にしてここまで来てくれたやつだ」


「……ありがと」





小さくお礼を言うと段々視界が慣れてきて、中沢君の姿が見え始める。



直樹の顔が案外近くにあってびっくりした。





「お礼なんていらない。それよりさ、直樹さんだっけ。杏を守ってやってくださいよ。


学校では謹慎処分くらってますよ」




「…はぁ?」