口から血が少し出る。
「もう1発だけ、やっちまうか…」
周りにいる人たちは全員で5人…。
殴られると思って目をぎゅっと瞑った。
「…おい。てめぇら、俺の杏に何してやがる…」
「お。こいつが………………。え……?」
「誰だか知らないけどな? 俺は容赦しねぇぞ」
「直樹、人を殺すのは駄目だからね」
「智、忠告どーも。そんじゃ、俺は片っ端からやっちゃいますから」
…直樹??
こんな怖い声だけど、やっぱり安心する…。
目をそっと開けば、そこには直樹と見知らぬ人がいた。
一瞬目が合った直樹は耳を閉じろと、あたしに耳を塞ぐ仕草を見せた。
言われるがままに耳を塞いで瞼を下ろした。
辺りには、血の臭いがする。
ドクドクと心臓の音がうるさい。
…直樹、怪我してないよね? 心が不安定な気持ちを表すかのように揺れた。