「おいっ! 小呉ちゃんに何すんだよ!」
罵声の嵐。
だけど蒼太の顔色は変わらない。
「杏、行こう。腕血が出てる」
「あ…ひっかかれたときかな」
「おい! 何行こうとしてんだよ…!」
クラスの男子まで駆けつけて、あたし達を睨んだ。
蒼太の手が、あたしを抱きしめていた。
「周りになんて言われようと、俺は杏の味方だかんな」
「…蒼太」
あたしが泣きそうになると、蒼太が頭を撫でてくれた。
突き放したのに、やっぱり優しく話しかけてくれるのだ。
完璧に、小呉の立場がない。
彼女は泣き止んで、すぐに睨んできた。
「許さないんだからぁ」
「…いいよ」
あたしはそれだけを言って保健室に行った。
先生は職員会議でいなかった。

