あたしが蒼太の視界に映ると。
「杏…」
とこちらを見た。
お母さんは少しびっくりしていた。
「……お母さんあたしを捨てたかったの?」
そう聞くと、お母さんは少しだけ辛そうに笑った。
「違うわ…、貴方に愛想をつかしたわけでもないわ…。
お母さん……この町に戻ってきたときがあって、その時…
出会った彼がいるの。
貴方に再婚を知らせば、きっと悲しむだろうって思ったから、こっそりといなくなったのよ」
それを聞いて、唖然とするしかなかった。
もう、こっちに戻ってくるという意味ではなかったからだ。
すると直樹があたしの肩を抱いた。

