誰かを苛めることは、苛立ちを誤魔化せると思った。 ただそれだけの理由で杏を苛めてしまった。 ある日、お兄ちゃんは言った。 「…俺、別居すんだ」 「え…?」 「じゃあな、小呉」 「待ってよ、お兄ちゃんっ…待って……」 かけがえのないものが、一瞬で消えてしまった。 うちが悪い子だから。 お兄ちゃんはいなくなったの? ねぇ、お願い。 貴方にまで捨てられたら、うちは生きていけないの…。 どうして今更、貴方を欲しがるのかな…?