一度キツく抱きしめられて。 そっと唇が重なった。 「行ってくる」 「あたしも…」 「お前に怪我はさせたくねぇ。ここで待ってろ」 「直樹…」 着いて行きたいのに出来ないことがもどかしい。 「帰ったら、慰めてくれ」 「…うん、わかってる」 「じゃあな」 そう言った直樹は、あたしが大好きな表情を浮かべていた。 自信に満ち溢れている優しい顔だ。 「…いい彼氏じゃない」 小呉がいることを思い出して振り返ると笑みを零していた。