直樹はやれやれと言わんばかりに両手を広げた。




「何だか、杏も単純なヤツだな」


「違うし…」




「で? 何しに来たんだよ」


真剣な顔つきに変わった直樹に、あたしもしっかりと見つめ返した。


「止めに来たの」


「誰を?」


「直樹を」


「はぁ?」



「…復讐はやめよう」





すると直樹は周りを気にせずにあたしを抱き寄せた。


学校のど真ん中だから、ちくちくと視線感じる。



「な、直樹…?」




「だよな…」



耳元で囁く直樹の声は、弱々しく聞こえた。



「柏にも言われた」