兄貴は、怖い。 それだけだった。 暴力でしか分かり合えないと思っている兄貴。 何て哀れなのだろう。 そして愛と、暴力で満たされる男でもあった。 近所の人は俺等のことを 「悪魔の家」と名づけた。 毎晩、食器が割れる音。 俺と母さんは何もしていない。 父さんは仕事を理由に違うオンナと浮気をして、家に帰ってこない。 居心地のよかった家庭だなんて、 生まれて1回も思わなかった。 俺の兄貴は本当に最低なヤツだ。 兄貴に反抗する思いから、 誰も信用しないと決めていた。