家を出ると、リュックを背負い直した。
家の外はもう11月を迎えて、寒さが身体中に響く。
お母さんが追いかけてくることはない。
毎日冷え切った目で家の中にいるのだ。
5年前、お父さんが生きていれば。
あたしはこんなにも不幸にならなかったのかも知れないのに。
「さむ…」
パーカーをぎゅっと握り締めて歩き出した。
どこへ向かえばいいのか分からず、ただただ途方に暮れた。
家を出たのは6時過ぎで日は既に沈んでいた。
どんどん辺りは色を失くして暗くなっている。
「…コンビニ入ろうかな」
ドアを開けると温かい空気に包まれた。店員はあたしに笑顔を向ける。
これが営業だと分かっていても、嬉しかった。
(誰かの笑顔を見れるなんて、外しかないなぁ…)