「アイツは昔にも、嘘をついたことがある。


でもその嘘は、誰かのためだった。



だから俺は許した。

……許さねぇと智が可哀想だったから」





「…うん」




「アイツの昔ついた嘘は、智が「転校」するって言って中学校を休んだことだった」




「え―…」




「あれは今でも覚えてる。

いや…忘れられなかったんだ」



そう呟くと、直樹の瞳が少しだけ揺らいだ。




「転校するって嘘をついた理由は、彼女に捨てられたからだった…」






あたしは前に智さんが言っていた言葉を思い出した。