直樹が腕を広げて、あたしを抱きしめた。
少しだけ直樹の鼓動が聞こえる。
「……眠れない理由は、蒼太達か?」
「んー…それもあるけど…」
「けど?」
「智さんがどうして、嘘ついたのかなって…」
直樹の返事が中々返ってこない。それもそのはずだ。
彼にとって、本当に信頼していた友人に裏切られたのだから。
「……今はわかんねぇ。
でもきっと、分かる日は来るから。
アイツが嘘をつくなら、よっぽどだ」
眠そうに直樹が言うと、あたしの頭を軽く撫でてくれた。
「後は?」
「智さんが嘘をついたこと、直樹が知ったときに“昔と同じ”って。
あれはどういう意味だったの?」
部屋に沈黙が訪れて、何分経ったのか分からない。
直樹もそう簡単に言えないのか、あたしは返事をただ待った。