「あの…ゆっくりでお願いします…」
「なぁに言ってんだ。この俺が手加減すると思ってんのか?」
いえ。
全く思っていませんけども。
風に吹き飛ばされることを想像して青ざめる。
そんな事を考えていると、直樹がバイクにまたがった。
慌てて直樹の服を掴んだ。
「もっと抱きついてなきゃ、落ちんぞ」
「えっ!?」
落ちるのは嫌だから、必死に抱きついた。
慣れない男の人が傍にいると、自然と心臓の音が大きくなっていった。
「っはは、心臓の音でっけー」
「うるさいっ!」
今、きっと顔が真っ赤だ。
そんな事ばれたら恥ずかしい。
赤い顔を隠していると直樹の声が響いて、バイクが走り出した。
「ひゃぁあっ!」
予想以上の速度に驚いて、抱きつくことしか出来なかった。

