「杏、ごめん。蒼太とちょっと話していい? 事情は後で説明するから」 「うん…、分かった」 素直に頷いて、部屋を出る。 正直あたしもあの場所にいるのは、空気が重過ぎた。 部屋を出ると、変わり果てた家が見えた。 泣きそうになるのを堪えて、その場から逃げ出した。 「あたしは……」 あたしは弱い。 誰かに頼っていなきゃ、生きていけない弱い人。 握り締めた手のひらは冷たくなっていて、いつの間にか直樹の家に向かっていた。