返信をせずに携帯を仕舞う。
「美味かったよ」
「ありがと…。そんな事言ってもらえたの初めてだから嬉しい…」
よく分からないけど、溜め込んでいた涙が溢れてきた。
直樹は一瞬驚いた顔をしていたけど、そっと頭を撫でてくれた。
「大丈夫だ。お前には俺がいるんだから」
「うん…」
寄り添うような言葉に、あたしはどんどん涙が零れ落ちた。
「…泣いてるヤツはどうすればいいのかわかんねぇから…。
暴走族の本性見に行くか?」
「…?」
直樹が言う意味が分からず、パーカーをもう一度着て彼の背中を追いかけた。
だけどそれが間違いだった。
アパートの駐輪場には、派手なバイクが止めてあった。
それをただ呆然と見つめる。
「ほら、乗れ」
あたしの腰を引き寄せて抱き上げると、強引に乗せられた。

