音楽室から出ようとしていた足を止めた。
「あたし、今日男装してたのにどうして分かったの?」
「…空気かな。
杏らしい、そういう雰囲気を感じたから。
昔からの付き合いだし、
男装なんて何回かしたじゃん」
「あ。そうだっけ」
「そうだよ」
苦笑しながら、音楽室を出た。
「…静くんも、きっと何かを抱えてるんだなぁ……」
「杏っ」
「あ。智さん、ナイスタイミング」
振り返れば、智さんが息を切らして走ってきた。
「待った?」
「いや。今音楽室出たとこだよ。ほら、ここ音楽室前じゃん」
「あ。本当だ」
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