「つ、翼ちゃん、待って下さい!」


緋麻里が私が着ている黒のカーディガンの裾を掴んだ


「……あの、誰がいたんですか?」


「雛菊の幹部クラス」


「……!」


緋麻里は驚いたように表情を変える


「でも、まどかはいなかった。 アイツを一人にしていいのかしら」


機会を伺って何かと私に仕掛けてくるんだよね


悲劇のヒロインを演じ周りを味方につけ、私を悪役として居続けさせる


まどかの周りには常に人でいっぱいだ


本性を知っているのは私と緋麻里ぐらいかな?


「まどかは嫌いです。 自身の欲求の理由だけで翼ちゃんを傷つけるのですから」


緋麻里は怒りに顔を歪ませていた


「私は気にしてないよ。 むしろ、雛菊になんて既に未練はないしね」


「ウソですね」


緋麻里の全てを見透かすような瞳に私が映った


私はこの時の緋麻里が少しだけ苦手だ