「大した事じゃないよ? "帝"の為に久々に取っ組み合いしようかと思って、ね!」


「だからって不意打ちはなしだろ、"狂"」


蹴りを受け止め、やり返し、拳を避けて、やり返す


塁の戦い方には笑顔がある


笑みが深ければ深い程本気でかかってくる


今の状態は本気だが、楽しんでいるように見えた


取っ組み合いが終わったのは開始してから一時間後の事だった


「……っ、それくらいっ…動ければいいんじゃない?」


俺から距離を取って肩で息をする塁


「いや、正直、ついていけるか心配だった」


久々に動くとどれだけ鈍ったかわかる


身体も重いし


「そんな風には見えなかったけど。 てかさ、病室勝手に抜け出さないでよ。 結構探したんだから」


「それは悪かった」


投げてきたペットボトルを受けとる


「所で、ありがとうってなんの事?」


「……これまでの事にだ」


質問に答えてから蓋を開けて半分くらい一気飲みした