翼が走り去った後、方針状態のまま資料室に引き返し長イスに座る


……行ってしまった


抱き締めた手にギュッと握りしめる


「ひっ…ぐ、う……」


ギリッと歯を食い縛り、声を抑えた


質問の答えは、翼だ


だが、言ったら引き留める事となる


折角前に進もうとしているのにな


もう終わりにするんだ


翼を想って泣くのは今だけにしよう











あれから、どの位経ったのだろうか


資料室のドアが開き、


「――結局言わなかったんだ」


「……鸞、か」


聞き覚えのある声に俺は頭をあげずに返した


因みに涙は止まっている


「言えばよかったのに。 無理にでも引き留めれば変わったかもよ?」


「……そうか? 翼が誰かの隣で笑えるなら喜んで身を引くぞ」


「大河がいいなら、オレはこれ以上、何も言わないよ」


鸞の声と同時に俺のスマホに着信がなった