強がりな元姫様



「……確か、翼は紅茶が好きなんだよな」


自販機にある紅茶のボタンを押す


下から出てきた紅茶を手に戻ろうと身体の向きを変えた


バタバタと向こうから走ってくる足音


見えた姿は茶髪のショートの女子生徒


白神の幹部である…名前は確か、ヒマリ


正体を明かすまではウィッグを被ったままだと聞いている


向こうも俺の存在に気づき、顔色を変えた


俺は手に持った紅茶を後ろに回して隠した


「あ、あのっ! すみません!」


幸い紅茶の存在は気づいていないようだ


俺の前で止まり、ヒマリは俺を見上げた


「翼ちゃんを見かけませんでした!? 外には出ていないと思うんですっ! 知りませんか!?」


顔は青ざめており、目には涙を浮かべていた


必死な様子は分かるが、素直に言うわけにはいかない


「悪い。 見てもないから知らないんだ」


「……そう、ですか」


胸に手を当ててヒマリは涙を流した