「俺が、"あれ"さえ見なければよかったんだ」
「あれって?」
「…………いや、なんでもないんだ。 忘れてくれ」
「……」
翔太は俯いたままフェンスに背中を預ける
言っている事と行動が正反対だ
「……」
私は翔太の横に並び、フェンスに触れる
病院の外の景色が見渡せた
「私しかいないんだし。 聞かなかった事にするから独り言のつもりで言ったら?」
「!」
「それとも、私が″裏切り者″だから言えないとか?」
「違う!!」
ガンッ!!
フェンスを殴り付ける音が響いた
「翼は裏切ってもいない! 元の原因は俺なんだ!!」
「原因の発端はあれ、なんでしょう」
「……っ」
強く噛み締めたせいで唇から血が流れていた
「じゃあ、話してよ。 言わなきゃわからない」
泣きそうになっている翔太を見捨てるなんてできるわけない



