「塁は、時折黒くなるよねー」
「……」
ケラケラ笑う鸞、いなくなった後も方向を凝視している浩輔
「……私から入っていい?」
「あたしが先に入りますよ。 中にいるかもしれませんよね」
「だったら俺が先頭だ」
私と緋麻里の間を通り、星夜がスライド式のドアをノックする
「――はぁい。 開いてますよ」
鈴のような可愛らしい声が聞こえた
星夜は迷う素振りすら見せずにドアを開けた
個室にしてはやけに広い空間だ
窓際のベッドの上に水色のパジャマを着ている少女が本を広げていた
長い茶髪に透き通った黒色の瞳で容姿が人形みたい
「えっと…どちら様?」
少女、緒方遥さんは困ったように首を傾げる
「……将太の友達」
星夜がいうとパアッと顔を輝かせた
「翔太君のご友人でしたか。 これは失礼しました」
ご丁寧に頭を下げる