「つ、翼ちゃん……?」
「……やっちゃったわ」
それしか言えなかった
「よ、よくも二人を……!」
倒れた二人の男を見て、最初に声をかけてきた男が髪を思いきり掴む
「いった……」
髪が抜けてしまいそうだ
「女は男の命令には従うもんだろうがっ!」
振るった拳がスローモーションのように近づいてくる
「翼ちゃん!」
「!」
緋麻里の声が耳に響き私は目を閉じた
が、痛みはいつまで経っても襲ってこない
それどころか髪を掴んできた手が離された
「……?」
恐る恐る目を開けると目の前で誰かの手が男の拳を受け止めていた
誰かはわかっている
「俺の女から離れろ……!」
だけど、相手を仕留める程の鋭い目付きと地を這うような低い声は知らない
知っているのに知らないというおかしな感じ
「ひっ!」
男の顔が真っ青でガタガタ震えだした



