「私さ、心が壊れたんだ。 ひび割れていたものが砕け散った。 もうなおらないんじゃないかって思ってた。
だけど、新崎家は暖かい何かがこう、少しずつ壊れた心をつくろってくれてるようで……」
痛みなんてない、心地好さそのもの
「私、単純なのかもね」
ベンチにもたれ込み、天井を見上げる
「翼ちゃんは…お父さんを許せませんか?」
「そうね。 だけど、復讐はしないわ。 雛菊にもね」
「……どうして? 彼らは、傷つけたんですよ。 仕返し位許せるんじゃないですか?」
「緋麻里?」
俯き、表情は見えないけど様子はわかった
膝に置いたではいたいほど握り締められていて、ポタッと甲の上に何かが落ちてきたのは涙だった
「あたし、許せません! なぜ翼ちゃんばかりがこんな目にあうんですか!? 翼ちゃんは悪くないのに……!」
「……緋麻里」
手を伸ばそうとしてやめる



