「……二度とここには戻って来ないから」
「なら、早くでていけ」
「……」
男は翼に見向きもせずに書斎に戻った
「翼」
「……っ」
泣きそうになるのを必死にこらえている
「……もう嫌。 わかっているのに…こんなにも心が痛いなんて…泣きたくないのに泣いちゃうなんて……」
目を覆った手の隙間から涙が流れ、床に落ちた
ポンポンッ
手を握った方とは反対の手で翼の頭を撫でる
翼はわかったのか目を覆ったまま頷いた
「失礼しました」
静かな玄関前に俺の声が響き、閉まるドアの音がやけに大きく寂しく聞こえた
「――……私、弱くなったかも」
途中で立ち寄った公園
ベンチに座るなり、翼がボソリと呟いた
自販機で買ったホットの紅茶を手にしている