「さんざん好き勝手に言ってこのまま帰れると思うなよ。 名くらいは言え」
「……新崎」
男に背を向けたまま、答えた
この名字を聞いて、思い当たる人とそうでない人がいる
それを聞いた男の場合、
「新崎? 聞いた事ないな」
後者の方だ
これは使いたくなかったんだけどな
バサッ
ヴィッグを外して男に再度、身体を向けた
「……!?」
男の顔が驚愕に歪んだ
「……おや、この顔にご存知で?」
かけたメガネのフレームを指で押し上げる
「あ、あなた様が、ど、どうしてこのようなお姿で」
性格が一変しオドオドしくなった
人が変わりすぎている
「言ったでしょう、話があると」
ジッと見据えると男の身体が跳ね上がった
「どうも人を下に見やすいようですね、貴方は」
本題の手前の話をした
男は分かりやすく狼狽えている



