翼が飛び出していったドアを眺めるしかできなかった


無理にでも男の話を止めれば傷つかずに済んだのに


学校での嫌がらせを受けるよりも血の繋がった家族に心無い事を言われる方が傷が深いかもしれない


信じていた分程、言葉が鋭利な凶器となっていく


目の前の男が翼の父親だなんて……


「……君は何か話があったのではないか?」


見ると男は仕事に取りかかろうとしていた


相手が学生だからってあまりにも下に見すぎじゃないか?


「……そこまで、言わなくてもよかったのではないですか?」


腸が煮えくり返る程に、目の前の男に怒りが沸いた


「言って当然だ。 むしろあれくらいで抑えたのに感謝して欲しい」


男が眉間を寄せて言葉を発する


「あれくらいだと? それで翼を傷つけたのか!?」


なぜ、翼が傷つかなければならないんだ?


もはや目上に対しての敬語を使わなくなっていた