「本当の自分ってまだ見つかってないんだ。 今のオレも一つの人格に過ぎないし」


「……なら、そのままでいいじゃない」


「……え?」


「全ての人格が[冴木鸞]自身なら無理して一つに絞らなくてもいいと思うのよ。 それが嫌なら、炎舞の総長が言った通りにすればいい」


「……」


腕が緩んだ隙に冴木鸞から離れた


「……緋麻里、何だか後ろ髪に違和感じるんだけど」


「あ、今、ほどきますね」


「……プッ」


呆けた顔で固まっていた冴木鸞が突如吹き出した


「アハハハハハッ! ハハハハハッ!」


大声で笑いだした


「……どないした?」


颯一が恐る恐ると言った感じで肩に触れる


「いや、まさかそんな事言われるとは思わなかったから…ハハッ!」


ひとしきり笑った後で一息ついて


「ハーッ、思いっきり笑ったら喉渇いちゃった。 取ってくるね!」


空になったコップを片手に個室を出て行った