..数ヵ月後..

「――――うん。課題曲もなかなか出来上がってきてますね。」

蓮唯の担当トレーナーの蜩 佳(ひぐらし すぐる)は言う。

「課題曲って言っても…コンクールとかには出ないんでしょ?」

「えぇ。まだこの学園に入って数ヵ月ですし、

それにしても4月に入って今は7月。結構上達するものですね。」

佳は蓮唯の評価表を見ながら言う。

「そりゃ…上達するでしょ。

佳…せんせ。」

蓮唯は佳を先生と呼ぶようになった。

「そうですね。」

佳は笑うようになった。

「ねぇ、佳せんせって優の何なの?」

「優様のことは今関係ないですよ。」

佳は紅茶を蓮唯に出す。

「関係あるでしょ!!だって優の執事でしょ?」

「はぁ…優様とは幼い頃知り合ったんです。

私には両親がいなかったため奥様…

優様の御母様に拾われたんです。」

「優のお母さんってどんな人?」

蓮唯は聞く。

「とりあえずあなたより遥かに上品なお方ですね。」

「そんなはっきり言われたら傷つく…」

「そこまで落ち込むことはないのでは?」

「なんで。」

「そりゃ…。あなたも美麗様の愛娘ですから…。」

佳は顔を真っ赤にして言った。

「美麗様?佳先生って誰にでも様って付けるの?」

「そりゃ…付けますよ。」

「本当?」

蓮唯は怪しそうに聞いた。

「嘘つきました…。」