「えぇ〜っ。」





案の定、菜子ちゃんは不満の声を上げた。





「お母さんに買い物頼まれてて……ごめんね。」





でも私がそう言えば、菜子ちゃんは仕方なさそうに手を振る。





「そっかー……。柚子ちゃん家、大変だもんね。バイバイ、柚子ちゃん、また明日。」



「うん、バイバイ。」





私も菜子ちゃんに手を振り返した。





重たい鞄を肩にかけ、美術室の扉に手を掛ける。





美術室から出る際、ふと奥にいる一ノ宮先輩に目を向けてみた。





先輩はやっぱり、悲しい瞳でこっちを見ていた。





「……嫌な感じ。」





ぽつり呟く。