【完】向こう側の白鳥。









「……ありがとう。」



「いえいえ。」





そこでやっと、何かを考えて強張っていた一ノ宮先輩の表情が緩んだ。





「……柚子は。」



「はい?」




「……まだ、アイツのこと好き……?」





少し悲しそうな、一ノ宮先輩の灰色の瞳。




この目を見れば、先輩と付き合う前を思い出す。



お姉ちゃんを想うばかりに、いつも儚い目で私を見ていた先輩の瞳……。




あの時はこの目が嫌で、仕方なかった。



一ノ宮先輩はお姉ちゃんのことしか、想ってないと思っていたから。


……今は違う。



それはさっきの言葉で、確信してしまった。





先輩の言いたいことが分かってしまって、苦笑いで先輩の目と私の目を合わす。