【完】向こう側の白鳥。









先輩は無言のまま、私の手を引いて歩く。





昨日、さっきと違って、その場限りじゃない。



ちゃんと手を繋いで、まるで彼女のように接してくれている。




……私の勘違いかも知れないけれど、その些細な事が物凄く嬉しい。




優しく離さないように握られた自分の手を見て。


ソッとその繋がれた手を握り返した。





「…………。」




瞬間、歩いていた一ノ宮先輩の足がピタと止まる。





「先輩?」



「……柚子。」




手に、ギュッと力が込められた。





先輩の顔を覗けば、擦り傷が多いことに気づく。



さっきまでは先輩より、俊二や康稀さんの方が凄い傷で、あまり気にならなかった。