「柚子ちゃん……早く、気づいてよ。」
「え……?」
菜子ちゃんは私の目の前までやって来た。
いつものような、柔らかい雰囲気は無い。
「柚子ちゃんの行動で、傷つく人がいるんだよ。」
傷つく、人……?
「あたしもだし。……沢渡先輩、一ノ宮先輩も……。…………梅芽ちゃんも。」
菜子ちゃんの言葉に、心臓がドキッと音を立てた。
「柚子ちゃんは怖いから、逃げてるんでしょ?」
「一ノ宮先輩の本音が聞きたくなくて。」
「まともに先輩の言葉なんて、聞いたことが無いくせに。」
それだけ言って、菜子ちゃんは立ち去って行く。
私はただ呆然と、その場に立ち尽くしていた。