【完】向こう側の白鳥。









あの日から、菜子ちゃんは部活に来ない。



学年が違うから校舎でも顔を合わせることはなくて。



ただ時々、登下校の際に見かけることはあった。




向こうも私に気づいている素振りはあったけれど、私と菜子ちゃんが会話をすることはなかった。





一ノ宮先輩は部活に来る。



だけど目なんて合わない。


視線なんて感じない。



純粋に、絵を描きに来ているだけ。





私の絵も存在も、まるで渦に飲み込まれたように消えてしまった。








午後五時半。



絵に集中していないから、この時間を過ぎることもない。





鞄に出しただけの道具を詰めて、小さく「お疲れ様です。」とだけ言葉を残して、美術室を出た。