【完】向こう側の白鳥。









最後の言葉は、本当に震えていた。





「…………。」





先輩は何も言わない。



ただジッと、体を遠ざけた私の手を見つめているよう。





私はその無言の空間が嫌で。



ギュッと目を閉じて、先輩が何かを言って立ち去るのを待っていた。





「……柚子。」





しばらくの沈黙が続いて、やっと先輩が言葉を放つ。



少し冷たくて、少し掠れていて、少し涙声。





一ノ宮先輩の手は私の髪に触れて、撫でるような仕草。





……暖かい。



こんなにも私は冷たく接したのに、私に触れる先輩の手は、冷え切った私を暖めるかのように暖かい。





「好きだよ、柚子。」