【完】向こう側の白鳥。









「一ノ宮、先輩……。」





私はもう、沢渡先輩の彼女。



ダメと分かっていても、目の前の腕を離すことは出来ない。





「柚子……。」





愛おしい、先輩の声。





一ノ宮先輩は知らないのかな……。



私が、沢渡先輩と付き合ったこと。



あのあと結局、私は一ノ宮先輩を置いて部屋を飛び出しちゃって、沢渡先輩も私の後を追っかけて来たから……。





沢渡先輩が話していないなら、一ノ宮先輩は事実を知らないはず……。





……一瞬、悪い考えが過ぎった。



一ノ宮先輩が知らないのなら、このまま先輩に甘えていたい、なんて考え。





「……付き合うの?」





でも先輩の声を耳にして、そんな考えは吹き飛ばされる。