【完】向こう側の白鳥。









いつから気づいていたんだろ。





もしかして、部屋に入って来たときから?



私からの視線を感じてから?



それとも、テーブルの上の紅茶を見てから?





……どちらにしろ、一ノ宮先輩は私の存在に気がついていた。



私がここにいるのを知っていた上で、このカーテンの前に立っていたんだ。





「……柚子。」





体が引き寄せられる。





初めて、先輩に想いを伝えた日を思い出した。



雨の中の、二人だけの世界。



雨粒に打たれた体は冷えていたのに、心だけは暖かかったあの日。





『…………俺も、好きだよ。』





嘘の甘い言葉は、今でも覚えている。



嘘と分かりながらも、ずっと胸に残っている……。