と、思っていたんだけど。
「ごめん……。」
一ノ宮先輩が掬えたのは、一匹の赤い金魚だけ。
……先輩、もしかして金魚すくい苦手……?
意気込んでいただけあって、私もおじさんも苦笑いだった。
「先輩、そんなに落ち込まないで下さい。ほら、見て下さいよ。可愛いですよ、この子。」
袋に少しの水と入っている、小さな赤い金魚。
先輩と一緒に覗き込んで、その悠々と泳ぐ姿を観察した。
……絵、描きたいな。
せめて、写真にでも収めておきたい。
チラッと横目で先輩を見れば、いつのまにか、先輩も金魚じゃなく私を見ていた。

